中小企業が地域で果たす役割をどう考えているのか。

 (あきま)
 二番目は、地域産業と地域経済の再生についてです。
 その前提として、中小・零細企業に対する区長の認識をうかがいます。
 区長はさきの所信で「どのような状況にあっても、区民の皆様の生活を守っていくことが私の責務」と表明しました。素晴らしい決意です。しかし、区内中小企業はアベノミクスによる円安で、材料や仕入れ値が高騰し苦境に立っています。そしていよいよ、来年4月、消費税率が上がります。
 わが党は、消費税増税が区内中小企業に与える影響について、区長の所見を繰り返し求めてきました。区長はその度に、予測できないと答えてきました。私は、区長は本当に中小零細企業のことをわかっている人なのだろうか、と疑問に感じてきました。
 区内事業者の多くは、増税分を売値に上乗せできない中小零細企業です。区長は、この人たちが存亡の危機に立つことは、区政の大本が揺らぐことだ、という認識があるのでしょうか。
 地域経済、区民福祉や教育、防災・防犯、住民自治・町会などの運営等々に、区内中小企業が果たしている役割を、どう考えているのでしょうか。所見をお示しください。

 (吉住区長)
 区内の多くの中小企業は、昔から職住が近接する環境の中で事業活動を行い、地域と密接なかかわりをもっています。
 町会をはじめとした地域団体と連携し、地域コミュニティーの核として、安全安心への取り組みを推進している商店街のように、区内中小企業は地域における経済の安定のみならず、地域住民の生活の向上、交流の促進に寄与するなど、重要な役割を担っていると認識しています。
 

近隣型商店街にはイベントだけでなく構造的な支援策が必要だ。

 (あきま)
 区は前年度から産業振興プランを展開しています。わが党はプランの課題抽出、方向性とも的確である、と評価しています。
 しかし、プランは産業振興策に絞ったものであり、産業再生と地域再生をつなげ、持続可能な地域経済を実現する方向までは示していません。地域再生とは、高齢者や障害者、子育て層を含む区民生活そのもの、その家計消費が地域に波及し、好循環することです。

 私は3つの角度から提起します。
 第一は、近隣型商店街の再生です。
 先日、谷中のまちづくりグループが、谷中ぎんざ商店会振興組合理事長を講師に、商店街とまちづくりをテーマに勉強会を開きました。
その中で理事長は、地域の住民を顧客にしている店が大幅に減り、観光客を相手にする店が主力になっているが、商店街の命は近隣住民のくらしを支え、住民から支えられることだ、と力強く訴えたそうです。参加した茂木区議が感動した、と話していました。
 高齢者・障害者、子どもの見守り、防災・防犯などに商店街が果たす役割は重要です。しかし、近隣型商店街はいま、例外なく存亡の危機に立っているのではないでしょうか。絶えさせてはなりません。
 区長は一昨年の決算委員会で、私の質問に「近隣商店街は地域コミュニティーの核として、またまちづくりを進める上で重要な役割を担っている」と答弁しました。
 しかし、それ以降も近隣型商店街のシャッター店舗は増え続けています。区長はこの衰退をどう認識しているのでしょうか。まずお答えください。
元気出せ商店街事業はじめイベントへの助成も必要ですが、それだけでは商店街は守れません。
 空き店舗での開業についての家賃助成制度の創設、街灯LED化助成の拡充や電気料補助の拡大、子育てすくすく手形扱い店への助成など、構造的な対策を抜本的に強めるべきではありませんか。所見を求めます。

 (吉住区長)
 近隣型商店街は地域コミュニティーの核として大きな役割があるが、売上の減少や空き店舗を抱えるなど厳しい状況が続いていることも認識しています。
 区としても昨年度から、空き店舗で開店する事業者を支援する「商店街空き店舗対策事業」を創設し、空き店舗の解消を図るとともに、商店街の活性化につながる様々な補助制度により支援を行っています。
 地域特性や課題の把握に努め、商店街と意見交換しながら、近隣型商店街の支援に積極的に取り組んでまいります。

区の制度を使って生まれる仕事を、区内中小企業の仕事おこしに。

 (あきま)
 第二は、区の施策すべてに区内中小企業の仕事起こしを貫くことです。
 私は22年の予算委員会で、福祉、教育、防災、環境、まちづくりなど区の全施策が、区内中小零細事業者の仕事と結びつくように工夫すべきだ、と求めました。以後、区民が区の制度を使って生まれる仕事が、区内中小企業に十分回っていない実態を指摘し、事業ごとに目標を決めて取り組むべきだ、と再三求めてきました。
 区長は当初、私の指摘した手法も念頭に入れ支援を拡大する、と前向きでしたが、ここにきて、施工技術や業者選択の幅を狭めることや価格面での競争が十分に行われない怖れがある、として消極的になってきたように見えます。
 私は、どんな事業も一律に区内中小企業に回せ、と言っているのではありません。耐震改修工事や太陽光パネル設置など高額な工事で選択の幅が狭まるのはもちろん問題です。
 しかし、高齢者の住宅のバリアフリーや介護・介護予防のための住宅改修などは、近隣の事業者が担うことで、その後のメンテナンスなど早く対応でき、なにより高齢者の見守りなど地域のつながりが深まります。
 区長は価格面での競争といいますが、区民の小さな仕事まで大手やその系列の企業に奪われたら、地域にそういう仕事を担う技術や心遣いを持つ事業者がどんどんいなくなってしまうではありませんか。
 区長。区の事業については、区民福祉の向上と地元中小企業の仕事起こしの相乗効果があがるよう、あらゆる知恵を使うべきではありませんか。改めて所見を求めます。

 (吉住区長)
 区内経済の活性化や企業育成の視点から、区内中小企業を積極的に支援していくことは重要です。
 私はこれまでも、区内中小企業への発注を可能な限り増やすよう留意しながら、各種事業を実施して参りました。
 今後もそのような意識を持ち、各種事業についてはさらなる創意工夫を重ね、区内中小企業が発展・振興するよう支援の拡大に努めてまいります。

ものづくりの若い力を活かして地域再生を。


 (あきま)
 第三は、ものづくりの若い力をさらに引き出して街づくりをすすめることです。
 台東デザイナーズビレッジを中心に広がった、ものづくりのまちづくり、いわゆるモノマチは、そのイベントが大きな経済効果をあげていることは区長もよくご存知です。
 さらにモノマチ実行委員会は、年に1度のイベントにとりくむだけでなく、恒常的に活動する組織へといま発展しています。
今年度は、浅草北部地域でエーラウンドという取り組みも始まりました。先日の浅草ものづくり工房の施設公開は、参加者の規模、内容ともに大きな成功をおさめています。
 私も参加しましたが、工房入居者のこの1年での成長ぶりは、目を見張るほどです。
 芸工展は谷中の街にすっかり定着しています。
台東区は南も北も、谷中も、ものづくりを柱にした街づくりの可能性が広がっています。
 重要なのは、このものづくりに係る若い力を、地域再生に結合することです。台東区で働き、住み、子育てをする。職住接近の事業者と雇用を増やしていく政策展開です。
 私は決算委員会の総括質問で、空き家活用では、クリエイターが住居を兼ねたアトリエショップ、工房をつくる場合も対象に、と求めたところ、区長の前向きな答弁がありました。
 来年は台東デザイナーズビレッジ開設10周年です。
 今後の施策を豊かにするためにも、現在区内で開業しているアトリエショップの経営者や、デザイナーズビレッジ、ものづくり工房、民間のインキュベーション施設などに入っている、ものづくりのクリエイターへの意向を調査する。また、かれらと取引のある台東区の地場産業の企業の意見をきくなどして、今後の施策に反映させるべきではないでしょうか。区長のお考えをお聞かせください。

 (吉住区長)
 区はこれまでも台東デザイナーズビレッジの入居者をはじめとする若いクリエイターや、ものづくりの地域イベントである、モノマチやエーラウンドなどの参加する地元企業の方々と積極的にコミュニケーションを図り、意見の収集に努めてきました。
 皆様のご意見をうかがいながら、ものづくりに携わる若い力が地域の活性化につながるよう支援して参ります。


長期総合計画の中に、産業と地域の再生を重ね合わせた視点からの政策展開を。

 (あきま)
 以上、産業と地域再生の結合についての3つの角度から提起しました。
 台東区は平成27年度から10年間の長期総合計画を策定します。区長。「にぎわい・いきいき」というスローガンを堅持するなら、その中で、こういう視点からの施策を展開すべきではないでしょうか。お答えください。


 (吉住区長)
 区はこれまでも多様な産業振興策を通じて街全体の活性化を図ってきました。新たな長期総合計画の策定に際しましても、同様な視点で検討して参ります。


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