日本共産党の秋間洋です。
区長は所信で、国は「一億総活躍社会」に向け「新三本の矢」による新たな挑戦を始めている、と評価し、台東区も前例にとらわれない斬新な発想で施策を展開していく、と述べました。
しかし、この4月子どもが保育園に入れず仕事をやめなければならない保護者や、受入先がないのに退院を迫られている高齢者家族など、区民の深刻な問題には触れませんでした。
アベノミクスは、実質賃金の低下、非正規雇用の拡大などくらしと雇用を破壊し、日本経済は後退してきました。服部区長がこれを評価し、生活を軽視する政府と同じ舵取りをするなら、台東区民は苦しむことになります。
いま区長が、区政運営の中心に据えるべきは、憲法、そして主権者である区民を大切にする区政運営ではないでしょうか。

まず憲法です。
私は昨年、服部区長の憲法認識を繰り返し質問しました。
区長は「自らの憲法遵守義務は当然」と言いながら、内容・手続きとも立憲主義を踏みにじって成立した安保法制=戦争法を、憲法が定めた国会が決めたのだから憲法違反ではない、と答えました。これは、どんなことでも国会で決まれば違憲ではない、という認識で、憲法を遵守する立場ではありません。
立憲主義は、主権者国民をまもるため権力者に法の支配を義務付けています。一時的に選挙で多数を占めた国会が数の力をかりて、自らを縛る憲法=法の支配を解くことは、立憲主義違反です。区長はこれを理解していません。
いま焦点となっている二つの憲法問題について、区長におたずねします。
第一は緊急事態条項と地方自治についてです。
安倍首相は、改憲の入口として、緊急事態条項を掲げています。
災害や有事を理由に、総理大臣は緊急事態を宣言する権限を与えられ、その期間、内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定でき、国民は守らねばなりません。事実上の戒厳令です。地方自治体の長も、その権限は制限され、国家に従属せざるを得なくなります。
区は「台東区国民保護計画」の変更をすすめています。自民党は改憲案のQ&Aで、この上位法である「国民保護法」について、「憲法上の根拠がないために国民への要請はすべて協力を求めるという形でしか規定できなかった」と不満を表明しています。
緊急事態条項の憲法への明文化は、区長の権限も、台東区民の人権や財産権も制限します。
区長は昨年、「地方自治の本旨は団体自治と住民自治」である、と私に答えました。緊急事態条項の憲法化は、地方自治そのものを破壊する危険な動きです。反対すべきではありませんか。見解を求めます。

二つ目は憲法九条です。
服部区長は来年度予算案で、周年事業ではなく平和事業を予算事業化しました。これは高く評価いたします。しかし国の動きは、平和を希求するこの台東区の動きとは逆です。
戦後、戦死者を出さず、どの国の人も戦争で殺さなかった日本。その平和を大本で支えてきたのは憲法九条です。ところが、この世界に誇る平和の宝が今、自国の総理大臣によって攻撃にさらされています。
安倍首相は、国会で憲法九条二項を変えることをめざす、と発言しています。なぜ、ここまで露骨に表明するのでしょうか。
昨年、自民・公明は安保法制・戦争法を成立させました。しかし、これを発動するには交戦権を否定した憲法九条二項が邪魔になっているからです。
安保法制にもとづく自衛隊の最初の仕事とされる、南スーダンPKOでの武器を携行しての駆け付け警護は、現地のPKOが「交戦の主体」になっているため違憲になります。
アメリカのIS掃討作戦の後方支援も同様です。
戦争法はつくったが、九条二項がその発動を抑えている。邪魔な条項を変えたい、というのが首相の本音です。
区長。戦争法の成立で、区民から戦争での犠牲者が出る可能性が出てきました。これに憲法が歯止めをかけています。区民の生命を戦争から守るため、九条の改憲はすべきではない、と総理に進言すべきではありませんか。所見を求めます。

次は、区民の声を大切にする区政運営についてです。
区長は所信で、「躍進台東 新しい台東区」という自らの区政方針推進のため、19万区民に協力を呼びかけました。
しかし地域で私は、区が区民のみなさんの声を大切にしていないなあ、区長の熱意がこれで伝わるだろうか、と思うことが増えています。今日はそのうち二つの問題で、区長、教育長の見解を求めます。

第一は、この3月からスタートさせる台東区の介護予防・日常生活支援総合事業です。
なかでも要支援の方への区の独自基準でのサービスは、入浴介助などの身体介護は対象にしない、掃除や洗濯、買い物などの生活援助は最長45分に短縮、介護する人は介護士等の資格をもたなくてもいい、給付は1割削減する…など、従来の水準を大幅に低下させます。
これを強引に押し付ければ、高齢者の健康悪化、事業所の疲弊、従事者のさらなる減少につながります。とりわけ重大なのは、この新たな事業について、区民や介護に携わる事業所などへの説明が不十分で、開始目前の現在でも、現場は大変戸惑い、混乱していることです。

私は年明けから数か所の事業所を回りました。声を紹介します。
「新しい区基準のサービスを担うボランティアはどこにいるのか。結局は私たちがやらなければならないのではないか」
「資格のない人への研修は事業所任せ。区は本当にできると思っているのか」
「区基準では風呂に入れられなくなるが、どうするのか」
「生活援助のヘルパーの時給は1200円だが45分で900円にするとは言えない」
…などなど、とまどいと怒りばかりです。
2月に入り、利用者の事前聴き取りが始まっていますが、不安に対し「いままでのサービスを継続するから安心して」と言わざるを得ない。先が見えない、などの声もあります。
区議会には、それまで29年度対応としてきた方針を撤回し、昨年の12月に突然報告されました。
区長。3000人近い要支援の高齢者の健康と、それに携わる多くの介護事業所・従事者に影響する重大な新事業です。実施直前になって事業者や議会に説明するというのは、あまりに乱暴ではありませんか。所見を求めます。

私は昨年決算委員会で、目的のないためこみを増やすのではなく、いまこそ待機児童の解消や介護に使うべきだ、と質問しました。
これに対し区長は、区財政は楽観できないが、介護・医療での地域包括ケアシステムなどの行政需要に対応するのは私の責務、と答えました。
しかし、先に示された来年度予算案では、毎年増やしてきた介護予防サービス給付が今年度と同額です。自然増さえ抑えつける方針ではありませんか。
いやしくも、給付を抑制する目的から始まれば、必要な人に生活と健康にふさわしいサービスが提供されなくなります。区政の協働のパートナーとして大切にしなければならない区民や介護事業者にこんな仕打ちをしてはなりません。
区長はいま立ち止まり、介護が必要な区民やその家族、介護事業者・従事者の声に耳を傾けるべきではありませんか。
28年度途中に現状を調査し、事業所や区民の声を聴き、必要な見直しを行うこと。区独自基準のサービスへの誘導を意図的に行わないこと。この二つをお約束ください。いかがですか。

区民の声を大切にしていない二つ目は、蔵前小学校の改築に伴う児童への対策についてです。
児童数の増加による改築で、蔵前小児童は今年9月から、今から3年後、31年3月まで旧柳北小学校で学校生活を送ることになります。背景には、先行きを見誤った、適正規模適正配置方針による3小学校の統合があることは明らかです。
一番遠くから通う児童は徒歩で35分かかる、と教育委員会も認めるほど、小学生には大きな教育・生活環境の変化です。
それなのに、区が主催して保護者に直接行った説明会は、1年2か月でわずか4回です。大人数を一堂に集めて、すでに決まったことを報告するのが専らで、質問しづらかった、という声を聞いています。
教育長。これまで行った説明で、区の方針への保護者の理解が得られたとお考えですか。今回の仮校舎移転等の問題はそもそも、児童や保護者、PTAに少しでも責任があるのでしょうか。区の事情でお願いしていることなのではありませんか。見解を求めます。

PTAは改築協議会、三つの専門部会を立ち上げ、保護者の意見をまとめ、計画に反映させようとがんばってきました。昨年5〜6月に行った通学方法についてのアンケートは1〜5年の保護者の84%、オーケストラ団員の93%から回収するという画期的なものでした。区はこれらにかかった費用を出さず、学校会計で行ったと聞いています。
実際に仮校舎まで歩いてみる会も実施し、これに基づいて昨年7月21日にPTA会長名でスクールバスの運行、公共交通機関の利用料補助など8項目の要望が区教育委員会に提出されました。これこそ保護者の総意ではありませんか。
ところが昨年末、スクールバスは出さない。「めぐりん」で対応する。その対象児童も地域と学年で線引きする…という方針が保護者に一方的に報告されました。これは大きな衝撃と怒りを保護者の中に広げています。
「スクールバスを出す話はどうなったのか」「一本道を挟んだだけでなぜめぐりんに乗れないのか」「オーケストラ団員が通えなくなる」「子どもの立場にたって考えてほしい」。
私は年明け、友達と別れるのはつらいが、在校生でも転校を認めてほしい、など、子どものことを考えれば胸が詰まるような訴えにぶつかっています。
とくに、地域と学年で線引きしたために、保護者間・地域間でギクシャクが広がっていることは見過ごせません。
区民を分断するようなことを区が行えば、協働どころか、区政への反発を深めかねません。
教育長。仮校舎移転による通学での児童間の条件で格差が生まれることなど、あってはならないことです。区として改めて保護者の声に真摯に耳を傾ける機会をつくるべきではありませんか。
また、子どもの利益を最優先に、「原則みな平等」を基本に対応策を講じるべきではありませんか。所見を求めます。

今年度の最終補正予算では、史上最高の50億円もの基金が積み増しされ、基金は400億円規模になりました。わが党は必要な基金を否定するものではありません。しかしここ数年の目的のない貯めこみ一方の姿勢は区政を停滞させます。区長が所信で区民の苦境に触れなかったのは、区民の声を大切にする姿勢が足りないからではないでしょうか。
お金は区民に使ってこそ生きます。基金のわずか1%程度で、介護予防サービスの水準維持も、切実な蔵前小仮校舎への安全通学も実現できるではありませんか。
区長。あなたは所信で「躍進台東、新しい台東区」という目標を実現するうえで、繰り返し区民に協力を呼びかけました。介護予防も蔵前小の問題も、区民の声に丁寧に耳を傾けていないことが混乱の原因です。
区長は、区民の声に、謙虚に丁寧に耳を傾けることを、区政運営の基本に据えるべきではありませんか。所見を求め、私の質問を終わります。


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