補正予算のうち1億7000万円を防災・保育所待機児解消へ(6月21日、区議会本会議)

日本共産党の秋間洋です。
私は、第33号議案・一般会計補正予算(第2回)を可決し日本共産党区議団が提出した修正案を否決した、企画総務委員会報告に反対する立場から討論を行います。

 今回の補正予算は、当初予算を「骨格と言われれば骨格の予算」と表明していただけに、無所属で区長選を勝ち抜いた区長が、初めての定例会に提案する、吉住カラーに満ちた本格的なものになるかと、注目しておりました。
 また、未曽有の大震災と原発事故をつうじ、被災地・被災者の救援と復興、区民のいのちを守り抜く防災・福祉の区政の実現、この二つの課題を正面に据えたものになるはず、と期待していました。
 
 しかし、内容・規模ともに全く不十分であり、今回の補正を合わせてようやく例年並みの当初予算になったにすぎません。これについては、わが党以外の会派も、「本来当初予算に計上すべきものをなぜ補正予算にしたのか」と批判しました。
委員会の理事者報告で、議会軽視の事態が生じましたが、 
軽視したのは議会だけではありません。三つ目の認定こども園に対し、区民の轟々とした反対の声があるのに、これを逆なでするように、補正予算で来年4月の開設に向けて、1億7千万円余の工事費を計上しました。同じ建物の中で教育を行う柏葉中学への説明は今年に入ってからで、とまどいを広げました。区政の主人公である区民そのものを軽んじているのであります。
区の「認定こども園3つの理念」には、地域との連携、支えあいを大切にすることを、しっかりうたっています。いやしくも見切り発車するようなことは避けるべきです。

区長はわが党の代表質問に、「常に区民の皆様のくらしに触れ、寄せられた様々なご意見に耳を傾けながら」区政を運営していく、と答えました。
区長。その所信をスタート早々から踏みにじってどうするのですか。

よって、この補正予算を認めることはできません。

具体的に三点指摘しておきます。
第一に、被災地の支援・復興に貢献する強い意思が見られません。補正に盛り込まれたのは唯一、社会福祉協議会が行うボランティア活動支援への77万円の助成だけです。
わが党台東地区委員会が呼びかけ、今日まで行った20数回の支援ボランティア隊のガソリン代・雑費にも届きません。区は、被災地から要請があれば、東京都を通じすぐに送れる50台の自転車がありながら、いまだに棚ざらしにしています。私たちはすでに区民から寄せられた48台の新車を現地に送り、高校生はじめ自転車を津波にのみこまれた被災者から大変喜ばれています。

二つ目は、防災予算の貧弱さです。
外壁補修工事や耐震補強工事の助成、住宅修繕あっせん融資制度の改善、太陽光エネルギー普及などの予算を増やしたことは前向きであり、この点は評価できます。しかしその多くが、いままで制度がありながら区民が活用できなかった問題点にメスを入れていません。制度の改善が伴わないため、たとえば耐震化率でいえば27年度までに90%などの区が掲げた目標を達成できないことは明白です。
三つ目は、放射線量測定など、原発事故から子どもや区民をまもるための予算が全く計上されていないことです。6月上旬に行った区内16ポイントの線量測定も、このたびの小中学校プールでの調査も、予算の流用などで対応するだけで、政策課題にしていません。
わが区議団は先週の金曜日と一昨日の日曜日の二日間、区内17か所・67ポイントで放射線量測定を行いました。区が上旬に行った結果同様、東京都が今回行ったのに比べ2〜3倍の放射線量が検出され、継続的・科学的な測定が必要であることは明らかです。
これに対し、わが党区議団の修正案はどうでしょうか。
本来なら基金の一部を取り崩し、あるいは4億円見込む前年度の剰余金を使い、本格的な防災・福祉予算への修正を求めたいところでした。しかし、すべての会派から賛同いただけるよう、歳入・歳出とも区長が提案する補正と同額の、緊急かつ必要最低限の内容にとどめました。
区民が全く納得していない認定こども園の1億7千万円余の工事費を全額削減し、その財源を、防災対策と、保育所待機児童の解決、二つの分野に重点的に振り向けるものです。

耐震化が計画に遠く及ばない最大の要因は、耐震診断から補強工事費用に至るまでの負担が重過ぎて、入口の診断そのものを、はなから諦めてしまうことです。
修正案は、診断費用の100%補助、補強工事補助額の増額など、区の制度を拡充し、利用を大幅に拡大する道を開きます。太陽光エネルギー活用の規模を1.5倍に広げ、深井戸も含めた放射線量の測定を継続的に行うなど、防災と環境対策を区政の中心課題に押し上げています。

待機児をなくしていくためには、認可保育所を増やすことこそ最善の策です。千束保育園が大規模改修の間使用する旧竜泉中学は、すでに1100万円かけて保育園仕様になっており、それを引き継いで同規模の認可保育所を整備するには、そうお金はかかりません。
補正予算が、地域の反対をよそに、園庭もなく日の当たらぬ認定こども園を1億7千万円もかけてつくり、90人の受け入れしかできないのに対し、わが党の修正案は、100人受け入れできる認可保育所を安価で整備するというものです。
どちらが子供や保護者の利益にかなっているか、区民の理解を得られるかはあまりに明白ではありませんか。

 この修正案に対し、委員会ではほとんど質問がありませんでした。意見や注文がたくさん出された補正予算とは対照的であります。
 

私は、新しく議員になられた皆さんが、本会議でも委員会でも、積極的に質問し、発言される姿を見て、大変頼もしく感じました。
みなさん。議員の一番大事な仕事とは何でしょうか。行政のチェック機能を果たせるか、ということであります。
 行政が提案した議案は、本音では問題があるなあ、と思っていてもしがらみやマンネリで認めてしまうことは、もうやめようではありませんか。問題があったら修正し、区民にとって少しでもよくなる方向に区政を動かすことが、私たちに票を投じてくださった有権者の期待にこたえることである。お互い肝に銘じ、切磋琢磨していきたいと、思います。

 国の政治は、途端の苦しみの被災者をよそに、民主党と自民・公明の権力争いばかりです。憤怒の思いは皆さんも同じではありませんか。
打開の道といえば「大連立」で、消費税増税、TPP、構造改革と原発温存。「赤信号みんなでわたれば怖くない」というのでは、国民の希望は断たれてしまいます。 
昨日復興基本法が「大連立」で成立しました。被災者の生活再建が復興の土台であることがあいまいにされ、被災地の農漁業も生業も、立て直しは新成長戦略との整合性がとれる範囲に限定されるとしています。被災者をおきざりにし、大震災に乗じてとことん利益をむさぼろうとする財界のシナリオそのものです。
私たち地方自治体の政治に携わる者にとって重大なのは、国が定める基本方針を踏まえ復興施策を講じる「責務」を負わされたことです。復興を上からの押しつけですすめることを可能にする仕組みになっています。地方分権・地域主権に逆行する危険な動きであり、看過できません。

それだけに、私たち地方議員が、主権者国民・住民の最も身近な代弁者として働くことが大事になっています。そしてそこにこそ、この国の未来がかかっているといっても言い過ぎではないと私は思います。

 この補正予算と修正案のどちらが、区民にとって良いものであるか。みなさんの良識ある賛同をお願いし、討論を終わります。
ありがとうございました。


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