(秋間)
 予算審議を振り返り、中小企業、防災・街づくり、子育て、放射能、四つのテーマで、区長と教育長に質問する。

許せない!消費税増税を容認する区長

(秋間)
 まず、中小企業を守る問題だ。
 国の予算案が衆議院を通過した。小泉政権を上回る社会保障の切り捨て、コンクリートの無駄遣い復活と大企業・富裕層への減税ばらまき、政権交代にこめた国民の期待を完全に裏切った。
 特に消費税増税を先取りして借金を増やし、自民党顔負けの粉飾予算にしたことは近い将来必ず禍根を残すだろう。いよいよ消費税の増税が民・自・公三党で強行されようとしている。
 消費税は負担するのは国民だが、間接税なので納税するのは企業だ。日本商工会議所の調査では、消費税が増税されたら、販売価格に転嫁できるかという質問に、年商1500万円以下の中小事業者の71%が「できない」と答えている。
 台東区は、消費税を売値に上乗せできず、身銭を切って消費税を納税するしかない中小零細企業が圧倒的。それでも区長は、消費税増税を容認する態度を変えないのか。

(吉住区長)
 私は消費税増税について容認する、しない、と答弁したことはない。
 消費税率の引き上げは社会保障財源を確保する観点からの検討がなされており、開会中の国会で議論されているので動向を注視して参りたい。

(秋間)
 国会上程が目前の今、動向を注視する、というのは、容認にほかならない。しかも、年金引下げや医療・介護の改悪とセットになった増税だ。
 消費税を払えず、ただ働きし借金して納税するのが、多くの区内中小零細企業であり、区長の姿勢は認められない。
 台東区は小売・卸で4.9兆円、製造出荷で1500億円はじめ、5〜6兆円の商いをしている町だ。5%増税は、仕入れ控除を7割とみても900億円の規模になる。区の年間予算に匹敵する。
 これではせっかくできた産業振興プランも、足元から崩れてしまう。
 区長は、国に対し消費税は増税するな、と意思表示すべきだ。

新たな中小企業融資制度の検討を

(秋間)
 その産業振興プランを実のあるものにするためにも、2つ提案する。
 まず第一は、信用保証協会の保証付き融資では、新たな運転資金が受けられない中小企業が増えている。
 区が金融機関に預けている預託金を、区の債務負担行為に振り向けるなど、区内の信金・信組と協力し、新たな台東区らしい融資制度をつくるべきだが、どうか。

(区長)
 区は社会経済状況の変化に応じ、融資制度を改善し、現在14種類のあっせん制度を設け、利子と信用保証料の補助を行っている。
 現時点では、委員提案の新たな制度をつくる考えはないが、環境の変化に応じ、効果的な融資制度を実施する。

(秋間)
 私の提案は全国でも例がない試みだ。本区は20年前、「中小企業振興基本条例」をつくり、「中小企業の基盤の強化と健全な発展を促進し調和のとれた地域社会の発展に寄与する」と宣言した。
 今度のプランは「創造力あふれる産業文化都市・たいとう」という、「目指すべき姿」を掲げた。それに対応する、新しい地域型の中小企業融資制度を、台東区から発信すべきだ。

あらゆる事業で中小企業の仕事ふやしを

(秋間)
 二つ目の提案は、不況にあえぐ中小企業の仕事確保のため、区のすべての事業での発注率をつねに調査し、目標を持って施策の改善を行うことだ。
 区の事業は、福祉や街づくりを担う大事な仕事に支えられている。高齢者の住宅バリアフリー改修、地震に強い建物にする工事や家具転倒防止器具の取付け、太陽光パネルや屋上緑化工事など、たくさんあり、これらの仕事が、区内中小企業に回れば、地域経済をぐっと底上げできる。
 物品購入や公共工事は当然だが、耐震補強工事、高齢者住宅改修、環境にやさしいエネルギー利用促進はじめ、すべての事業で、区内事業者への発注がどうしたら増えるかをテーマに目標をたて、施策改善を進めるべきではないか。

(区長)
 私は可能な限り、区内中小企業を優先して発注を増やす考えをもって各種事業を実施してきた。
 今後もそのような意識を持って事業を展開していく。

(秋間)
 耐震補強工事は5割、介護保険での住宅改修は4割程度と、発注率が大変少ないのが区の現状だ。最低8割、事業によっては9割の目標を掲げ、制度・運用方法を改善するよう強く求める。
 東日本大震災は、地域の中小工務店、建設職人の存在がいかに貴重であるかを教えた。そんな働き手がこの10年で地域から2割近く消えている。どんなに立派な地域防災計画をつくっても、推進する技術と力が地域になければ、復旧復興はすすまない。できることからすぐに取り組んでいただきたい。

災害に強い街づくりを

(秋間)
 その地域防災計画だが、根本的な問題、災害に強い街をどうつくるか、特に防災を中心とした街づくりの議論が後景に押しやられている。
 地盤の弱い所には危険物施設はつくらない、液状化の危険性がある所にはできる限り多くの人を住まわせない、など土地利用計画の基本をあらためて据えなおすことが重要だ。
 3つ提案する。
 一つ、地域防災計画ができたら、それに基づく、建物・構造物・擁壁等の損壊、火災、洪水などのハザードマップをつくる。
 二つ、そのハザードマップに基づき、都市計画マスタープランを見直す。
 三つ、谷中・根岸の木造住宅密集事業を実効あるものにする制度をつくる。
 谷中・根岸は、建築基準法42条第2項は、狭い道に面した建物は、道路の中心線から2メートルセットバックしなければ改築できない、という規制が、建て替えが進まぬ原因だ。これでは不燃化はすすみません。
 実効ある制度をつくるべきだ。

(区長)
 ハザードマップは、洪水は区が、建物倒壊や液状化は都が改定する予定だ。これらの修正を見据え、都市計画マスタープランの見直しの必要性を検討する。
 谷中・根岸は、助成制度の要件を緩和するなど、建て替えに関する利用しやすい支援策を検討していく。

区南部での認可保育所を早期整備を約束

(秋間)
 認可保育所の4月入園は、入れる枠を213人も上回る申し込みがあった。両親が常勤であっても認可保育所に入れない、区が児童福祉法の責任を果たせない事態になった。
 区は26年度までに400人の待機児童が出る、認可園で1〜2園の整備が必要、という認識を示していたが、この4月入園をめぐる状況は、この区の見通しを上回るものではないか。
 認可保育所を前倒しで整備する緊急対策を講じるべきだが、どうか。


(野田沢教育長)
 竜泉保育室の新設、千束保育園でのゼロ歳児保育開始など対策を講じたが、入所希望者の大幅増で、待機児童は今年度より増える可能性が高い。
 認可保育所の区南部への早期整備を検討する。

所得の低い家庭の子どもに学力向上策を

(秋間)
 待機児が増える背景には、すぐに二人で働かないと生活できない、子育て世帯の所得低下がある。労働市場を非正規雇用にシフトさせてきた国の雇用政策の誤りは重大だ。
 しかも、この予算年度は、昨年につづく子育て世帯への増税と負担増が重くのしかかる。
 保育料の値下げ、短時間保育や子育て支援ヘルパーの利用料の引き下げを行うべきだ。 
 とくに心配なのは、学力への影響。台東区は貧困と学力には関係がありそうだ、と認識しながら、問題を掘り下げず、対策をとってこなかった。
 新学習指導要領は事業時数・内容を大幅に増やしたため、授業についていけない子どもが増えることは必至。
 ダブル・トリプルワークなど働く時間を長くして家計を支える低所得世帯の親は、子どもの勉強をみる時間的な余裕も、塾に通わせる経済的な余裕もない。
 荒川区や江戸川区は来年度から、そういう低所得世帯の子どもの基礎学力をフォローする施策を区民参加で始める。区は対策を講じるつもりはないか。

(教育長)
 すべての子どもに学力や体力など基礎を身に着けさせることは公教育の使命だ。
 所得いかんにかかわらず、きめ細かい指導をすすめるなど重点的にとりくむ。
 他の自治体の取り組みには課題もあるのでは、と認識しており、情報収集に努め慎重に検討する。


子どもの体を放射線から守れ

(秋間)
 子どものことでもう一つ心配なのは、放射線だ。
 給食食材の検査に踏み出したことは評価するが、2か月に1回というのは少なすぎる。検査機器を購入し、検査回数を増やす、とはっきり約束せよ。
 測定を網の目のように行い、結果を区民に迅速に明らかにすることこそ、放射線に対する区の姿勢が区民から信頼される一番大事な仕事だ。
 区民の参加を得て、学校通学路をはじめ区内の放射線量マップづくりを行うべきだが、どうか。

(教育長)
 子どもの安全・安心の確保と保護者の不安を取り除くため、より一層の柔軟な検査体制が必要だ。
 現在国に貸与を申請しているが、購入も検討していく。
(区長)
 マップ作成はいまは考えていないが、今後、定点ポイント以外でも必要に応じて空間線量測定を行い、区民に情報を提供していく。

子どもの心を放射線から守れ

(秋間)
 放射線から子どもを守る課題は、体だけでなく心の問題にも及んできた。
 子供たちに、新たな安全神話を植え付けようという動きが教育現場に入り込もうとしている。文部科学省は、原子力村の一員である日本原子力文化振興財団に副読本の作成を委託し、放射線の安全をアピールする内容の教材ができた。
 放射線は自然にあり、医療などで貢献していることを強調するばかりで、原発や核実験などでの大変な被害をもたらしてきたことは記述していない。人類が数百万年つきあってきた自然界の放射線と、数十年のわずかな歴史の中でも甚大な健康被害をもたらした原発や核実験の放射線をごっちゃにしている。
 死の灰は分解できず、永遠に閉じ込める方法もないという、科学的な到達点も指摘していない。
 区教委はこの副読本を、文科省の方針どおり今月学校におろす、と答弁しました。教育委員会は行政から独立しているはずです。
この副読本にあらわれた文科省の認識をどうとらえ、現場に配布するのか。

(教育長)
 副読本は放射線に関する知識、利用、エネルギー源としての記載があり、事故の際に身を守る方法も明記されている。
 教育委員会は、正しい知識と理解を深めることが大事、と認識しており、子どもが適切に判断・行動できるよう副読本を活用していく。

(秋間)
 原発事故後、スピーディー情報を公開せず無用な被爆を増やしたのが文科省だ。子どもの被ばくの上限値を20mSvとした安全委員会に追随し、食品からの被ばくを含めて算出しなかったのも文科省だ。しかも反省していない。
 そんな文科省のお達しに、教育委員会が言いなりになるのか。教育委員会は行政から独立しているはずだ。
 広島・長崎・ビキニ、そして福島の苦しみを経験した日本だ。その日本の子どもたちを、利益だけを追い求め命を軽んじる原子力村勢力に、体も心も侵させてはならない。
 もし、こんな副読本が無批判に教育の現場で使われるようになるなら、原発安全神話に洗脳され大変な過ちをおかした私たち大人が、再び子どもたちを安全神話にさらす、過ちを繰り返すことになると、厳しく指摘しておく。


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