私は、平成24年度の台東区一般会計予算はじめ、国民健康保険会計予算、後期高齢者医療会計予算、介護保険会計予算、以上4つの予算に反対の立場で、小高明委員の賛同を得て留保した少数意見報告を行います。

 まず一般会計予算です。
産業振興プランに基づく、ものづくり支援での前進、不妊治療への助成、地域猫活動の支援など、一部評価できるものはあります。また、今議会で区南部への認可保育所の早期整備、給食食材の放射線測定器の購入への前向きな意思表明があったことは重要であり、評価します。
しかしながら、年金・手当が半年ごとに引き下げられる高齢者、重度障害者、ひとり親家庭など社会的弱者に対しても、子ども一人当たり33000円の住民税増税、子ども手当減額の子育て世帯に対しても、そのくらしの痛みを和らげる対策を講じない冷たい予算です。それどころか、紙おむつや風呂券などわずかな福祉予算まで削減し、高齢者・低所得者に痛みをもたらす予算であり、容認できません。

 国民健康保険料・後期高齢者医療保険料・介護保険料、すべてを値上げし、耐え難い重い負担を区民に強いる3つの特別会計予算も到底認められません。

 国民健康保険は、世界に胸をはれる国民皆保険制度の最後の砦です。しかしそれが、区民の3世帯に1世帯が滞納するほど高い保険料になり、窓口負担が3割の制度になってしまっては、もはや社会保障制度としては行き詰まってしまった、と言って過言ではありません。国は当初5割だった国庫負担を引き下げ続け、来年度は34%から32%へと、さらに2%引下げます。国民皆保険制度は、アメリカによるTPPの外圧でつぶされる前に、国が自ら破壊する道をすすめようとしています。

 介護保険の今回の値上げは、もはや一般財源を投入しなければ保険料を抑制できないこところまできたことを示しました。介護保険はそもそも、給付と保険料を連動させる典型的モデルの制度設計で始まりました。後期高齢者医療制度はこれを模倣し、厚労省流に言えば「保険料の値上げで痛みを実感してもらう」制度としてスタートしました。障害者自立支援法の向かう先も介護保険型の制度でした。
これら給付と負担を連動させる制度が、いかに社会保障にふさわしくないのか、後期高齢者医療制度、障害者自立支援法の事実上の破たんがすでに示しましたが、いよいよ元祖・本丸の介護保険までが、その限界をさらけだしたのであります。

 区長は、消費税増税に反対すべきだ、という私の質問に対し、消費税をめぐる国の動きを注視するとしました。その理由は、社会保障財源を確保する観点から検討されているからだ、とし、政府がすすめる「税と社会保障の一体改革」を事実上、評価しました。
 しかし、国会審議で明らかになったのは、増税する5%のうち、社会保障に充てられるのは1%程度しかないことです。一方、年金、医療・介護の給付削減で2.7兆円、やはり消費税1%相当の負担増が計画されていることです。
 消費税増税と社会保障の切り下げが一体で進められようとしていることは、誰の目にも明白であります。

 皆保険制度も介護保険制度も年金も、保険あって給付なし、の道につきすすむことを許す区長の姿勢は、絶対に認められません。

 今回の予算審議で特徴的だったのが「財政危機」論です。わが会派以外すべてが、「基金残高が起債残高を下回ったらどうする」「財政危機宣言前夜だ」「歳出の抑制をどうするのか」と大合唱しました。
区長は、起債と基金の関係についての私の基本質問に、ここ20年のうち13年は基金残高より起債残高が多かった事実を認め、「基金残高と起債残高のバランスが、区民生活や区財政に直接的な影響を及ぼすものとは考えていない」と、認識を示しました。自治体財政のイロハであり当然の見解です。
しかし、わが党をのぞくすべての会派の質問に対して、思い切った歳出抑制を行うと答弁し、「さらなる事務事業の見直し」「予算編成方法の工夫」「事業実施の緊急度、事業継続・行政の関与の必要性」「既定の計画事業の見直しも視野に」…などなど、ありとあらゆる言葉を使って歳出を抑制していく意志を表明しました。


 私は基本質問で、基金の取り崩しと起債は確かに70億円を超え多額になったが、区債を42億円償還し、繰越金も10億円以上見込めること、庁舎や基幹系業務システム改修、保育園・児童館や公園改修など区民財産を維持・向上させる必要な支出であると指摘しました。
 いたずらに財政危機をあおり、区民福祉を切り捨てれば、区民のくらしは痛み、子どもの未来は暗くなって、街の活力がなくなり、絆は弱まります。財政にもマイナスになり、結果的に区長が標榜する「にぎわい・いきいき・下町たいとう」に逆行せざるを得ない、ということを強く指摘しておきます。

わが会派は、区の財政の厳しい環境を否定するものではありません。国の経済・財政政策の逆立ち、間違いだらけの地方分権・地域主権改革の手法が続く限り、厳しさは続くでしょう。台東区が、限りある財政を適切、有効に使っていくことは当然です。
日本共産党区議団はだからこそ、その立場で無駄遣いと徹底してたたかってきました。

振り返れば、現在起債残高の大きな部分を占める、平成2年から4年にかけての毎年数十億円の土地等の取得、このうち33億円で購入した土地2つはいまだに雨さらしですが、こういう無駄遣いを追及しました。
大相撲升席での官官接待を区民とともに告発し、2000万円返還させました。また、世界一高い工事費の上野地下駐車場建設を、正面から反対してきたのもわが会派であります。

今議会では、代表質問で区長報酬の削減を主張し、予算委員会では、区長・議長交際費の縮減、西洋美術館の世界遺産登録の従来型の推進予算や、したまちコメディー映画・演劇祭への支出の見直し、同和予算の打ち切りなど、税金の使い方をただしました。
また、地域猫への町会枠の予算を提案したように、同じ金額を投じてもその効果が2倍、3倍あがる、施策の区民参加を徹底することで節約できるという新たな視点も提案しました。

歳入を確保する点では、公益大企業の社会的な責任を果たさせること、国や都に対して道理ある姿勢でのぞむことを一貫して指摘してきました。
わが会派は、道路占用使用料について、公益大企業に適正な負担を求めてすでに10年近いとりくみになりますが、政策減免の廃止、使用料引き上げなど見直しが続き、私が区議になってからのこの5年だけで、年間1億数千万円の新たな増収になっています。しかし、いまだに幾重もの減免措置はのこされたままであり、改善の余地は十分あります。
予算審議では、新たに電線地中化での東電やNTTの工事費負担の極端な少なさ、その後の道路占用料も地上の9分の1しかかからないことなど、至れり尽くせりであることが明らかになりました。これら公益大企業への優遇措置を見直せば、数億円の歳入は優に確保できるはずであります。

審議で主張しましたが、国に対しては、地域主権一括法により業務だけ移管し財政措置を講じなかった分の交付金の獲得、東京都に対しては、特養ホーム建設の用地取得への補助の復活や老人保護費への補助金拡大、木密地域整備や個々の耐震補強工事への補助の拡充など、喫緊切実な財源措置を求めることは、道理ある主張です。
 区長。だれもが認める道理をもって、歳入を確保し、区民目線に立って、無駄遣いを排し節約することこそ、区民に支えられる台東区政になるはずです。
 区長は今議会で「常に区民の目線で」「日々の区民の生活を守り」と何度も繰り返しました。そうであるなら、消費税増税は反対、年金の切り下げはやめてほしいという、圧倒的多数の区民の目線に立ち、国に対してモノを言うべきです。
払いきれない国保料や介護保険料に、子育て増税に苦しむ「日々の区民の生活」に心を寄せ、痛みを和らげる緊急策を思い切って講じるべきです。
そうしてこそ、万一本当に区財政が危機に立った時、区民が区長を支えて台東区を守っていこう、と立ち上がるのではないでしょうか。
 区長の政治姿勢が、住民のくらし・福祉優先という自治体本来の方向に一大転換することを期待して、私の少数意見報告を終わります。



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