風速15m想定をはずし、倒壊・火災被害も抑制

 東京都が4月18日に発表した被害想定は、東京湾北部地震、多摩直下地震、元禄型関東地震、立川断層地震の四地震を想定。フィリピン海プレート上面の深度が従来の想定より浅い、という最新の知見を反映し、震度7の地域が出るとしました。台東区は、最も影響のある東京湾北部地震では震度六強の地域が北部地域で想定され、全域が震度六弱という大変な揺れになると想定しています。
 平成20年度策定の計画時より深刻な事態を想定し、元禄型や立川断層の想定を行ったことは前進です。しかし、東日本大震災の教訓を十分生かしているとは到底言えません。
 台東区のように木造住宅密集地域が広く存在する地区で怖いのは、火災による死傷者です。しかし今回の想定は、前回はあった風速15m/秒想定をはずしています。M7.3の東京湾北部地震・冬の夕方午後6時で、消失棟数に対する死者の割合は、都で2.1%、台東区で2.5%としていますが、風速15mの関東大震災の時は17%、阪神淡路は5.7%の死者が出ていることから考えると大変低い想定です。



浅草橋駅の高架橋を支える柱には、鉄筋がむき出しになり、クラック部分からコンクリートの成分が染み出している個所もあります。耐震診断と補強は緊急課題です。(5月31日、あきま撮影)

 建物倒壊の想定も、過去の実例を根拠にしていないため、大変低く抑えられています。
 前回は不十分ながらも数値化されていた、大都市に固有の高架や地下鉄などの鉄道事故、ターミナル駅や地下街、大規模集客施設などの被害が定量的な指摘しか行われず、数値化されていないことも、被害想定を抑えた結果に結びついています。
 台東区議会第二回定例会では、複数の会派から、JR高架の耐震診断と補強計画について質問がありました。国と鉄道事業者、東京都と大型商業施設設置者は、しっかりと対策を講じるべきです。
 隅田川や神田川の堤防についても、震度7に耐えられるかの検証が必要です。
 13日の環境・安全安心特別委員会で私は、都の被害想定のこれらの問題点を指摘し、都想定を基にしつつも台東区独自で検証・想定をすべきである、と区の姿勢をただしました。他の会派からも同調する要望が出され、区は可能な限りの検証・検討を行う、と答弁しました。



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